大団円で暖かい気持ちになり、全てが丸く収まりめでたしめでたし…と思いきや！ 型破りな侯爵夫人と同士のような信頼関係のあった執事さんは…？ 少なからず、彼の方は夫人に身分差以上の好意を抱いていたようなんですが。

ヒーローの野心とヒロインの家庭事情のため契約結婚。 冷酷なヒーローも真っ直ぐなヒロインの心情に触れてお互い惹かれ合うようになり、でも自分の本心を認められずすれ違い…はド定番。 ですが、ヒロイン叔父の徹底したヒールぶり（普通は事情があったり改心したりする）に、本当に、ヒロイン母は貧しかったけれど幸せであったこと、身代わりの従姉妹もヒーローもお金はあるが虚ろな生活であることが、貧しい者の虚勢ではなく際立った作品でした。

ハーレクインには珍しく、早めにハッピーエンド。 ヒーローの気持ちも変わることなく、2人に誤解やすれ違いもなく。 ヒロインは悪くない。 友達が彼女をどれだけ思っているか、文句言いの母親でさえヒロインの無実を疑うことはなかったことからも、ヒロインが真っ直ぐな気質の、ただ不運だった女性であることがわかります。 ので、ヒーローの横暴や、ページ数が足りなくて最後がバタバタなハーレクインあるあるはなく、早めに2人の気持ちは一致して、最後も大団円です！

暗い顔の子連れの女性では惹かれない…というコメントもありますが、母親業ってのはそういうもの。 好きな彼女なら自分が、元気にしてあげたい、笑わせてあげたい、と思うものでしょう？ 現実には、それで離れていったり浮気する男性もいるし、子ども達のためにも頑張って笑顔でいるお母さん方もいますが。 本当に辛い時やしんどい時は笑えないし、そういう時こそ誰かの手助けが必要なんですけどね。 本気で好きになった相手には、結婚前に考えていた条件なんて皆吹き飛ぶと聞きます。 このお話のヒロインは、条件は全部、ぴったりだったんですけどね。

乳癌克服からのマラソン大会参加等、頑張り屋さんのヒロイン。 ヒーローとの間に入って画策する悪女か出てくるお話はたくさんあるけど、表向きには上手に振る舞って、言質を取られないよう特定の人を攻撃するタイプの悪女の描写が見事でした。 これ系の人に騙される人、自分が攻撃対象にならなければ気づかないので、男性も女性も結構多いんです。 ヒーローの親友が秘密を暴かなければ、ずっと騙し通せてたかも。 全てが明るみに出て、大団円。 親友ポールにも光明があって良かったです。 ポールに故・ヒーロー妹の手紙を渡す助言をしたのも、大会で倒れて皆が心配…からの懐妊報告で両家父母も大喜び、となったのも、前向きで諦めないヒロインあってこそのハッピーエンドでした。

とんでもない告白をしてますが、自分も同じ気持ちです。 ヒロインが幸せになって本当に良かった。 絵柄がこの作品ではちょっと、という方もいらっしゃいますが、友井先生はどシリアスや確執ドロドロのお話でもこの絵ですので、怖いのが苦手な自分でも読み進められます。

ストレート過ぎるし、何だか横溝作品みたいだなと思ったら、後書きでツッコミが!! やっぱり皆思うんですよね、獄門島みたいって。 まぁ今は、彼岸島も鬼畜島も自殺島もありますけどね。 ヒーローが外道、は同意します。

かと思ったヒロインでしたが、＋キャサリン÷2、どころか✕2か、2乗かくらいの強い女性でした。 低めの評価の方々にはヒーローが不甲斐なく思えたようですが、最初からヒロインに心を奪われていて、表面ではなく本質を見ることができる人だと感じました。 もし2人して強い人だと、折角のヒロインの特異性が霞むし、そもそも家計が窮することもない。 優しい義母を選んだ亡父も含め、ヒーローもヒーロー妹も、揃って心優しい一家。 だからこそ、人の温かさに触れずに育った（と言うよりよく生きていられた…）ヒロインも、心を開くことができたのだと思います。

ヒロインを赤毛のアンに例えているところがあるので、正に赤毛のアンのオマージュですよね。 染髪を失敗して短く切るの。 原作と違う、とがっかりされている方もいるので、原作も読んでみようと思います。 私はコメディも跳ね返りのヒロインも好きなので、楽しかったですよ。

ヒロインに魅力を感じないとのコメントも多いけど、萩尾望都先生の「イグアナの娘」のように、家政婦代わりに娘を使って褒めも感謝もしない母親のせいで、すっかり自信を失った自分から見た自分像、と考えてはいかがでしょうか。 別にヒロインは暗くも不美人でもなく、そう思わされてるだけ、という。 つっけんどんだし性格悪いとの評も多いけど、父親を亡くして全ての責任やお金の工面等ものしかかってきたら、グラス一杯に入った水に最後の1滴を足すように、今までのつもり積もった鬱屈も溢れ出ちゃいます。 ２人でヒーローの母にあった時、自然で、これがずっと続くと思えたところや、3週間のハネムーンがあっという間に感じたところに、お互いの静かな愛を感じましたが、どうでしょうか。

現代の考古学者が盗掘？ 19世紀のシュリーマンはトロイアの財宝を勝手に持ち帰ったようだけど、ハワード・カーターはツタンカーメンの王墓の発掘品を違法に私物化はしてなかったと思うけど…。 皆さんが怒ってらっしゃるのには、同意。 ヒロインと教授には、考古学者としての矜持も、遺跡を守る種族へのリスペクトも感じられません。 インディ・ジョーンズのような、ハラハラドキドキの楽しい作品にはなってますけど。

最後に、義母が息子に愛している人がいると分かる肖像画が、画面のどこかにあれば…。 ヒロインは、描けなくてスランプに陥ったんですよね。 でも覚悟を決めて、ありったけの思いを込めて描いた、画家生命最後の肖像画。 ぼかしたイメージ画でもいいので、ラストシーンか、母親が２人の誤解を解くシーンにでも入れてほしかったな。

と書いてる方がいるけど、私も好きです。 エピローグにも、あとがきにも出てて大満足。 義母には息子のホントの姿を知って貰いたいなと思ったので、目につく所にホームビデオのディスクを置いておく案を、レビューに書かれた方に１票。 ヒーローがアクション俳優っぽくないと書かれたレビューもありますが、お若い頃の真田広之さんや岡田准一さんは甘めのマスクで、分かりやすいマッチョイメージではありませんでしたが、結構なアクションをこなしてらっしゃいましたよ。佐藤健さんも。

アメリカ人は国の歴史が浅いことがコンプレックスのようですが、確かにヨーロッパや、古代からの文化・文明を持つ国々よりは無いけれど（※先住民族の文化はあります)、禁酒法時代の背景・建築を残すホテルの再建計画に、ワクワクしました。 ヒーローの実父の妨害工作に悩まされながらも、スキャンダルや黒歴史を逆手に取った、ヒロインのイメージ戦略はアメリカっぽいし、最後の大逆転まで、恋愛とビジネスのサクセスストーリーを両方、楽しめました。

他の方も書いてますが、シリーズもので全部で4巻あります。 読んでて、ああそうだった、アフガニスタンやベトナムの前に朝鮮戦争があったんだった、と思い出しました。 西と東の大国の代理戦争だったことは共通してますが、ハーレクインでは珍しいですね… 重いテーマですが、戦争の現実と両親の心情・性格が細やかに描かれています。 2人ともガンガン言い合うタイプなので、分かりやすく、どんどん読み進められます。

恋多き女性じゃなかった。 離婚や破局を繰り返す母親を反面教師にしたヒロインは多いけれど、この母はいつも本気で恋をしていて、今回、ヒーローの父の本意に気づいて別れた、と。以外だけど筋は通った人でした。 ヒーロー父の、ヒーロー母への愛も分かったし。

コミカライズの漫画家さんが、特撮ヒーロー＆美少女戦士もののファンか、又は、そのファンのお子さん持ち、ということはわかりました。 物語本編は、タイトルと伏線が見事に絡んで、ラストのハッピーエンドにつながります！ 特典に、本編のプラスアルファをお求めの方は、同じ漫画家さんの「過去への扉」をどうぞ。 物語のプロローグの一幕が読めますよ！

意外に皆様評価が低い。 誤解されたヒロインが、自分の誤解を謝罪して歩み寄ろうとしたり、自分の足で立とうとしたり、頑張ってると思うけどなあ。 ラスト、赤ちゃんも込みでの美しさを表現した広告の1コマで、単なる違約にならないようヒーローやヒロイン（とカメラマンさん)が頑張って、雇い主に考えを変えさせた（新たな企業イメージを提案できた)ことも含めて、いい終わり方だと思いました。

最後は大団円で、キャンセルで迷惑をかけたウエディングプランナーにも、お世話になった下町の食堂のお料理も、全て活かしての終わり方。 絵も綺麗だし、原作とコミックのページ数が合ってないので最後バタバタになりがちの作品も少なくないのに、これは後日談もしっかり描かれてあって、楽しく読みました。 違和感や不自然というなら、大富豪や貴族・王族と主人公がハッピーエンドという作品が大半のハーレクインのありよう自体が、リアリティに欠ける夢物語なんですけどね… そこを違和感なく読ますのが作家さんの腕、と言われてしまえばそうなんでしょうけど。 身も蓋もないことを書いてすみません。

他の方のレビューにもある通り、最後で救われたというか、本当に、もし弟さんが生きていたら、全てのわだかまりが解けたなら…と思わず願ってしまうような終わり方。 傲慢ヒーローや身勝手な元夫の話、って大キライなはず、だったんですけどね…